JULA出版局| 2025.08.01
第二次世界大戦終結から80年

今年は、1945年に第二次世界大戦が終結してから80年の節目の年です。
夏が近づくにつれ、「戦後80年」という言葉がさかんに聞かれるようになりましたが、世界中でくりかえされるいくつもの戦争を思うとき、決して「戦後」ではなかったような気がしますし、この数年は特にその思いを強くしています。
戦争のこと、平和のことを伝える児童文学作品はたくさんあります。
それは、そもそも子どものための書物が、「子どもたちが広い知識をもち、考えることで、争わない未来を切り拓いてくれる」ことに希望を託してつくられはじめたことと、決して無縁ではないはずです。
JULA出版局では、佐藤義美童謡集の表題作「ともだちシンフォニー」をこれまでにも何度かご紹介してきました。佐藤義美や金子みすゞが情熱をそそいだ童謡もまた、子どもたちの感性を信じ、美しい未来を託した芸術運動でした。
80年前に、そしていま戦禍にある人たちに思いを馳せながら、読んでいただけるとうれしいです。
*詩の全文ご紹介は8月31日までとさせていただきます。
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「ともだちシンフォニー」 佐藤義美
丸木舟に きみがのっている
わににおそわれている
ライフル銃をもって 岸にいるぼくは
きみをうたない。
戦争!
銃弾で死んだぼくの父は
銃をうったきみの父の顔も名もしらない
ふたりのあいだに
すこしだって憎しみがあっただろうか。
ともだちになろうよ きみとぼく。
十億の人が千人の意志で戦争をさせられる
責任もなく愛情もなく
子どもを まきぞえにして
一度きりの生命をすてて
十億の人は死ぬ。
さばく!
地球の表面をおおうさばくを
森にしたり沃野にしたりする能力をすてて
生きのこる千人
マストドン(古代象)をおそれる。
ライオンでさえも集団をくんで道具をもって
殺しあわないのに――。
結核、チフス、コレラ、ペスト菌の哄笑!
ああ、この太陽系の中、
自転し、公転する地球には人と人との戦争が
いつなくなるか、
他の太陽系の中
他の地球では人と細菌の戦争も終った!
たがいに もう一つの回転を
ともにしていても――。
琴座のむこうの空間でなくてここで
琴座のま下のこの地球の上で、
ぼくはきみと握手したい。
なかよくしようよ きみとぼく。
おとなの専有物ではない地球を
おとなになっても専有しない約束、
百マイルの上空から写した地球の写真を
部屋にかかげてじぶんだけのためにも
他人のためにも地球を愛する約束。
一人分の意志を二十億あつめても
一人分の意志は一人分だけあるはずだから
細菌からでも殺されるのをよす約束、
ウラニウム235 プルトニウム239の
分裂の時間を長くする約束、
超音速の旅客機 輸送機だけはつくる
旅行の自由と安全
居住の自由と安全
すてる玉ねぎはエスキモーのために
くるみ割りはくるみを割るために
まくらは頭のためにある約束、
かいき日しょくは恐れないけれど
さると人間が親類であることはみとめて
ことばを絵画と音楽と食道に近づける約束
人類だけは信じる人類だけは信じる約束。
約束をしようよ きみとぼく。
野や森のみどり
そこには一本一本の草や木がある。
雪の純白 結晶型の多種類
セム ハム ゲルマン
アラブ アルタイ すべての人種で
地球を一つのステイツにしたい、
最後の一片のパンなら
それを全人類でわけたい。
憎しみは宇宙にちらばらせて無にしたい。
そよかぜ!
丸木舟にぼくがのっている
わににおそわれている、
ライフル銃をもって岸にいるきみも
ぼくをうたない。
ともだちなのだ きみとぼく。